マチュピチュ
ペルー

 

インカの遺跡

  消えた空中都市

 充分には解明されていないインカ文明の遺物のなかでも、とりわけこのマチュピチュの遺跡には謎が多い。この標高2400mの山岳地帯に築かれた天空都市は、突然ここに暮らしていた人々に放棄され、無人の廃墟と化したと考えられている。

 「マチュピチュ」はケチュア語で”老いた峰”を意味し、遺跡の後に見える山は「ワイナピチュ」”若い峰”。遺跡はこの2つをつなぐ尾根上に広がる。深い渓谷で、谷底から見えず、宙に浮いているように見えるところから「空中都市」とも呼ばれる。奥地はジャングル。

 山肌の斜面には、アンデネスと呼ばれる階段畑が作られ、灌漑水路も整備されていた。自然の地形をそのまま利用し、太陽の神殿、インチ・ワタナの日時計、半月の寺院、3つの窓の寺院、太陽の処女の宮殿、水路や泉、浴場などが花崗岩によって造られている。支配者階級の住居と一般の住居は区別して設けられていた。

 こうした石造建築物に見られるさまざまな様式を整理すると、マチュピチュが建設された時代を前期と後期に分けることができる。前期はインカ以前のプレ・インカ時代、後期はクスコ・スタイルの後期インカ時代である。

 マチュピチュの機能についてはインカの聖域であったのではないかということだ。インカは「太陽の神」を信仰していた。太陽との接点、ならびに太陽を礼拝する宗教都市として建設された。遺跡の主な建物は神殿、寺院、宮殿などで、住居がその周りを囲んでいる。皇帝はここに僧侶などの聖職者を生活させていたのであろう。

 インカ帝国には、拡大した領地を結ぶ交通路として、クスコを中心にして、全長9,600キロの王道があった。そのうちの1本はクスコからアマゾン側に飛び出しているマチュピチュまでも延びていた。

 インカ末期にスペイン軍に首都クスコを取られた時、この王道を通じ、チャスキ(飛脚)によって皇帝の命令が伝えられ、聖地が侵されぬよう、すべての人々を葬って、マチュピチュの神聖と秘密を守ったのではないのだろうか。

づかせた。  

  

 マチュピチュ 

   インカの道・山の英知

 南米大陸を8000キロにわたって貫くアンデス山脈。インカはこの広大な領域を15世紀中頃に完全に掌握した。人口は現在のペルーの2000万人を優に超えていたが、その大半は標高3000米を超えるアンデスの高地に住んでいた。

 こうした大規模な社会を如何にしてつくりえたのか――米国の文化人類学者ジョン・ムラは「垂直統御」という

考えで、その謎を解き明かした。「アンデスの環境を高度によって異なる幾つかの層に分け、これを垂直利用し、生産物の補完体系を形成して行った」いうのが彼の説である。

 つまり、標高4000米以上の寒冷地ではリャマやアルパカの放牧を、4000米の冷涼地ではジャガイモの栽培を、それ以下の温暖多湿な地域ではトウモロコシを栽培したのである。

  土地を垂直利用することで、気候変動や天候不順によって引き起こされる飢饉が回避できた。ひとつの作物が不作でも別の高度で栽培されている作物が生き残り、これにより食料の安定供給が可能になったのである。

 さらに生産と流通体制を統御する支配体系が自然に発生し、アンデスの社会的基盤が形成されていった。

 こうした農牧業の仕組みは現在にまで踏襲されている。インカ時代からアンデス経済の基礎に「アイユ」と呼ばれる親族関係がある。親族内では労働力を財産として交換し合ったが、これは「アイニ」と呼ばれ、現在も大事な習慣である。

 インカ時代「アイニ」は国家レベルで行われた。民衆は国家に労働力を提供し、国家は見返りに富を公平に分配した。互恵と再分配の関係こそが帝国の発展を支えてきた。インカは数百年もの昔に高度な社会主義体制をとっていたのである。

 
 

マチュピチュ

 寒い、寒いクスコからバスに乗って1時間半。今度は登山電車に、乗り換えて1時間半。時間でもないのに、軽食と飲み物がでる。食べられないようだったら、現地の子供にやって欲しいと現地のガイドが言う。

 乗り継ぐ中に上着をぬいで半袖になる。2000米のマチュピチュ駅から、2600米の遺跡までバスで20分程急坂を登る。

 肌の露出部分に、虫除けスプレーをかけ、水と雨具を入れたリュックを背負う。遺跡は急勾配の山なのできついが、最小限の荷はかかせない。

 2時間位、ゆっくりと遺跡をまわる。帰りのバスに乗り込む時、振り出した雨はマチュピチュ駅に着く頃は、ざあざあ降りとなる。

 つづらおりの道をバスで下るとき、現地のボーイが、バスより早く、山道を駈け抜けて合図する。Goodby Boyと呼ばれ、最後にバスに乗り込み、乗客から1人1ドルのチップを貰う。感じはよくないが、ここで生活する人の大きな収入源になるのだろうか。

 

 

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